• メッセージボトル (すたきゅーぶろぐ)

#4 失われた"ものさし"

2019.01.17 00:48






子どもがいた。


子どもはピカピカの"ものさし"をもっていた。


世界にはたくさんのおもちゃが転がっていて、


彼は気に入った寸法のものを見つけると夢中で遊んだ。


ある日のことだった。


彼の前に奇妙な動物たちが現れた。


動物たちは異なる姿をしていて背丈もまちまちだったが、


彼らも皆"ものさし"をもっていた。


彼らの"ものさし"はどれも切断や溶接をした形跡があり、


すすけて錆びていたがどれも同じ長さだった。


ある動物が話しかけてきた。


『どれどれ?その"ものさし"は使いにくかろう。


私たちが使いやすくしてやろう。』


他の動物も話しかけてきた。


『これは君の幸せのためよ。


みんなが同じ"ものさし"を使った方が効率が良いもの。』


更に別の動物が言った。


『それが大人になるということさ。』


子どもは"ものさし"を彼らに差し出した。


いつの間にか地面にうつる影が伸びた頃、


彼は"ものさし"で影の長さをはかろうとして呟いた。


『俺の"ものさし"って、こんなだったっけ?


昔はつぎはぎや傷もなくて、もっと光沢もあった


気がしたけれど…。


俺がもっていた"ものさし"がどんなものだったか、


あいつらに尋ねてみよう。』


彼は群れにもどり、かつて自分がもっていた"ものさし"の


特徴を訊いてまわったものの、誰1人覚えているものは


いなかった。


途方にくれた彼は自分の巣穴に返った。


『せめて何か昔のメモでもあればなぁ…。』


彼は記憶を頼りに巣穴を探しまわった。


『これは…?』


押し入れの奥から昔遊んでいたおもちゃが


転がり出てきた。


昔の"ものさし"だとこのおもちゃはこれくらいの


長さだった気がするけれど…。


もはや、どこまでが自分の"ものさし"で


どこからが他の動物たちが手を加えたものだったのか


不明瞭だったが、


彼はどうしてももう一度自分の"ものさし"が見たくなって


工具を引っ張りだした。


そんな彼を見て他の動物たちは笑い、


もうこいつはもう群れにはいられないと思った。


群れが水と食料を求めてその地を去った後も


彼は作業を続けた。


夢中で"ものさし"を復元する彼の顔は子どものように


ピカピカと輝いていた。


 


すたきゅー


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